全英オープン観戦記  2004年7月


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. 全英オープンの運営を支えるマーシャル

世界で最も歴史と権威のある、第133(2004)全英オープンはスコットランド西海岸のロイヤル・トゥルーン・ゴルフコースで開催された。人口15,000人の長閑な田舎町トゥルーンには大会中に延べ18万人の観戦客が訪れた。7月の第3週、町全体は全英オープン一色のお祭り騒ぎであった。私はグラスゴーの宿からバスで約1時間の道のりを3日間会場に通った。 



会場やその周辺は老若男女のギャラリーで込み合っていた。何事もゆったりとビユーティフルな生き方が信条のスコットランド人が、大勢の人々をきびきびと捌いている。その整然とした組織力に驚いた。これを支えているのはボランティアスタッフ、いわゆるマーシャルである。マーシャルはギャラリーの案内、静粛を促すクワイエットボードの提示、ラウンドの進行などの業務を担当し、大会のスムースな運営を盛り上げている。

ノースベリックで一緒にプレーしたS氏は、数年に亘ってマーシャルとして活躍している唯一の日本人だ。S氏の話ではマーシャルは手弁当ながら、それぞれの役割に誇りを持って勤めているという。私は日本のゴルフトーナメントのボランティアを何年か経験したことがある。その時、お土産つきのご苦労さんパーティーとかプロが闘ったそのままのコースを廻ったりできる役得があった。それに比べると大違いである。

また、BBC(英国放送協会)のテレビ中継の、規模の大きさにもびっくりした。なにしろ18ホールを全部カバーして、毎日10時間もテレビで連続放送している。まさに、国を挙げてのサポート振りだ。

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.日本選手の活躍は?

予選ラウンドは、世界から選ばれた156名のプレーヤーが栄冠を目指して戦った。第1組のスタート時間は朝630分。3人ずつでスタートし、最終の52組目は午後6時過ぎとなる。英国の夏の日は長い。朝から晩までリンクスで熱戦が繰り広げられている。

私は、丸山選手と日本の選手についてコースを廻った。丸山は前月の全米オープンで4位という好成績を収め、日本人初のメジャー制覇の可能性を見せただけに今回の活躍が期待された。日本のマスコミは彼を追かけた。だが、ショットが不安定で今ひとつ精彩を欠いていた。かろうじて予選を通過したものの、彼本来の力を発揮できていない。そのほかの日本勢は、全英初挑戦の神山選手と平塚選手がしぶとく善戦した。6年ぶりに出場した横堀選手も踏ん張り4選手が決勝ラウンドに進んだ。

決勝ラウンドでは、見事予選を通過した75名の選手がプロの技を競い合った。残念ながら日本選手は上位に食い込むことはできなかった。世界の強豪選手のプレーを目のあたりにして、ショットの凄さ、切れ味のよさを再認識させられた。丸山茂樹を別にして日本の選手は、まだまだ世界の一流選手への道は厳しいように感じた。総じてドライバーの飛距離が足らず非力であった。

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.熱戦続く決勝戦

決勝ラウンドの最終日。アーニー・エルス、ミケルソン、グーセン、タイガー・ウッズなどが蒙チャージをかける中、日本のツアーで力をつけた米国人トッド・ハミルトンが首位に躍り出た。ところが終盤に入ってもつれ込み、優勝の行方は混沌としてきた。

ハミルトン11アンダー、エルス10アンダーと一打差で迎えた最終組の最終ホール。ほかの選手はすでに脱落し二人の一騎打ちとなった。ギャラリーは一斉に18番ホールに集まってきた。人込みで前が見えない。仕方なく、1番ホールの観覧席に上りプレーを遠望した。しかし、グリーン近くの様子は遠くて良く見えない。すると、隣にいた地元のおじさんが双眼鏡を覗いて、プレーの状況をいちいち解説してくれた。そして、スコッチウイスキーまで振舞ってくれた。気温も冷え込んできたこともあり、その味の旨かったこと。スコットランド人は気さくで親切な人が多い。気取り屋のイングランド人とは気質が違うようだ。

試合はエルスがパー、ハミルトンがボギーとなりプレーオフに突入した。観客は名勝負の再開に足を踏み鳴らして喜んだ。時刻は午後630分を過ぎている。プレーオフは1番から4番ホールのストロークプレーで行われる。ギャラリーはいっせいに1番ホールに向かって動き出した。幸運にも私はすでに陣取っている、1番ホールの観覧席で決戦の模様を間近に観戦できた。

激しい熱戦の末、ハミルトンがエルスを振り切り栄冠を手にした。彼は両手を空に突き上げて勝利の喜びをかみしめた。皆、無名の王者の誕生にいつまでも惜しみない拍手を送った。日本でコツコツと努力を積み重ねた苦労人の勝利に私の胸は熱くなった。

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.全英オープンを観戦するには

まず、チケットの購入である。このために現地の観戦ツアー(JAC Travel Scotland)に参加した。グラスゴーのホテルに3泊し、コースまでバスで送迎。3日間の観戦で500ポンド(約10万円)であった。宿の確保はこの時期難しく、英国人が大勢このツアーを利用していることを考えると、リーズナブルな料金なのだろう。ただ、バスの送迎時間が決まっているので、コースに早く行ってプロの練習風景を観察したり、お目当ての選手を最後まで追っかけたりする自由度がないのが欠点であった。

次に観戦の仕方である。全英オープンは天候が変わりやすいことで有名だ。スコットランドでは一日の中に四季があるといわれる。太陽がさしていたかと思うと、突然海からの風とともに冷たいシャワーに見舞われる。防寒具と雨具は必携だ。双眼鏡を携帯すると便利だ。カメラは撮影禁止のため不要。靴は履きなれたゴルフシューズがベターだが、スニーカーでも問題ない。食事は仮設のレストランや屋台店があるので好きなものが食べられる。ビールも自由に飲める。現金の引き出しは、ATMが数十台設置されている。

コース内はギャラリールートを自由に往来できるがともかく広大な敷地だ。「ある程度見方を絞って観戦するのが望ましい。好みの選手を何人か決めて、その組について廻るとよい。また、気に入ったホールの観覧席やグリーン近くに陣取り、次々と訪れる選手がどんな攻め方をするのか、じっくり観察するのもよいであろう。あるいはギャラリープラザの横に設置された大型テレビでビールを飲みながらゆっくり見るのも、プレーの全体像が分かり楽しいものだ。

コースのあちこちでは世界のトッププロが真剣勝負を挑んでいる。膝までかくれるほどの深いラフに、行く手を阻まれ苦戦している者。吹きすさぶ風にスコアを崩し脱落する選手。深くて狭いポットバンカーから、チップインして勢いづくプレーヤーなど悲喜こもごもであった。こうして飽きることもなく、リンクスに戯れた感動の3日間であった。

 
 The Open 会場  プレイオフ最終ホール
   
 プレイオフ最終ホール  会場前で
   
   セントアンドリュース アメリカ人と(カナダ人撮影)  恐怖の蛸壺バンカー